意外と知られていない床ずれ対策

 床ずれは、長時間同じ部分に体重がかかって血液の流れが悪くなったり、摩擦で皮膚などが傷ついたりすることで起こります。床ずれを治すのに大切なのは、『適切な処置』『十分な栄養』『除圧』です。
 今回は局所処置や2時間おきの体位交換ではない床ずれの治し方を考えてみましょう。

【一日中、寝てばかりいると】
  1. 食欲がなくなる
  2. 何も考えたくなくなる(認知症の始まり)
  3. 心臓・肺が弱くなる
  4. 起きあがるとめまいがする(起立性低血圧)
  5. 床ずれができやすくなる

身体各部での体重重量比

 人が寝た場合、頭部・胸部・殿部・脚部において下図の割合で重力がかかります。殿部は床ずれの出来やすい所であるといえます。
       7%       33%     44%         16%
腰に体重の約半分の荷重がかかります


床ずれができやすい部位
 反対に座位(椅子などに座った状態)をとり、仙骨部(骨盤の中央部にあり、背骨の一番下の骨)などの骨などの出ている所に圧力が加わることを防げば床ずれは次第に治っていきます。

 重要なのは、ここでいう座位とはベット上のギャッチアップではなく、足を地面につけて『すわる』姿勢をとる事です。


おしりと足の裏は床ずれになりにくい

 上図のように、座位はお尻と足の裏に圧力が加わりますが、お尻は厚い筋肉と脂肪で覆われており、脂肪がつまっているので床ずれになることは、ほとんどないのです。日本の施設は安静看護から始まっていますので、『寝かせきり』の傾向があります。もちろん主治医の意見を聞いて、心臓等の疾患や血圧に注意しながら、ゆっくりと起こして座位をとることが大切です。

【すわることの効果】
  1. 食事が食べやすい(前屈みの姿勢がとりやすい)
  2. 排便しやすい(寝たままの排便は非常に辛いです)
  3. 血圧調整がよくなる(私たちは姿勢をかえるごとに、全身の血圧を調節します。寝たきりだと起きるだけでめまいがします)
  4. 肺活量が増える(寝ていると肺は圧迫され、胸郭の動きが悪くなります)
  5. 筋力・バランス・手足の拘縮が改善します。
【栄養をとりましょう】
 すわる姿勢をとり、十分な栄養管理をおこないましょう。寝たままでは患部への血流も悪く、要介護者の表情も良くなりません。はじめは、足が棒状になっていて膝が曲がらず、足と足が触れると気持ちが悪い場合はクッションや枕を間におきましょう。車いすに慣れてきたら膝も曲がるようになり、手足特に下肢の拘縮が緩和されてきます。

 車いすを使うようになれば、姿勢と重力の関係で拘縮が次第に改善してくることも頭に入れておきましょう。

正しい知識を持ちましょう:床ずれ部位のマッサージは厳禁】
 初期症状である発赤は、皮膚の下に広い範囲の損傷があります。マッサージにより、さらに炎症が強くなるため厳禁です。強い消毒にも注意が必要です。治療に必要な細胞や再生した組織にも損傷を与えるので、必ず専門家の指示を受けましょう。基本的には壊死組織を除去し良好な肉牙形成の環境を作りドレッシング上からの圧迫を除去すれば良いのですが、最近はラップ療法など効果的な方法があります。

 入浴は皮膚の清潔を保つうえに血行をよくしますので、床ずれの予防や治療に効果があります。逆に、おむつは蒸れやすいので、床ずれの原因となる可能性があります。清拭は摩擦を加えることで、弱った皮膚を傷つけてしまいます。


 ベッドのギャッチアップは30度までにしましょう。座位をとることの出来ない方は、まず、お尻の位置を上図の*に合わせましょう。そして足側を15度くらいアップしてから、その後上半身を起こしましょう。お尻がずれないように位置を合わせてから、ギャッチアップします。
 重度の床ずれの場合は、30度以上アップすると、お尻に体重のほとんどの圧力が加わり、身体がずり落ちるために背中や腰の摩擦やズレ起こります。まず、膝を曲げて身体を固定してから上体をギャッチアップしてください

【引っ張られるといった不自然な姿勢によって筋肉がゆがむと悪化します】
〜当たり前のことが見過ごされています〜

 ベッド上で身体の位置を移したり、おむつ交換をする時、身体が引っ張られた姿勢になっていませんか?筋肉など体内の組織の形がゆがんでずれが生じると、血の巡りがさらに悪くなり、単に圧迫された時よりも症状が悪化します。

 寝たきりの人にとっては、不完全に抱き上げられ、身体の一部が引っ張られる状態があります。ベットをおこすときは気を遣いますが、戻す場合は注意しないことが多いように思われます。

 寝たままで、着替えるときやシーツを交換するときは、だれかほかの人に手伝ってもらうことにより、床ずれ等を予防することができます。

局所のみに目を向けず、お風呂に入り、座って、ご飯をしっかり食べて、床ずれ部位の圧迫をさけます。そして、移動の際には皮膚が引っ張られないように注意します。
このような、単純なことも大切な治療であると思います。