介護食について (1/4)


 食べることは生命活動のエネルギー源ですが、人間らしく口から食べるという事は『おいしい』『楽しい』『うれしい』など五感を使い脳が活性化され、生きる喜びや意欲を改善する元気のみなもとであると考えられます。

 施設・病院・在宅における要介護高齢者の楽しみは、第一位:食事 第二位:家族や友人の訪問 第三位:施設内行事 等になり、どの環境においても食事を美味しく、楽しく、安全に食べることが、一番の楽しみにあげられます。しかしながら、飲み込み機能が低下した場合、従来の介護食は味と見た目の悪い『ミキサー食』や誤嚥の危険のある『きざみ食』で対応してきました。

 実はこのきざみ食というのは、1960年に精神病の病棟にて内服薬を飲んでくれない患者さんに対して、食事の中にこっそりと混ぜて飲ませようと考えられた調理法です。その病棟の周囲の家畜が病院から排出された残飯を餌に与えていたために、つぎつぎと餌を食べた動物が眠ってしまうという、笑えない話もあります。

 その後、この調理方法は介護側にとっては効率的(一般の人と同じように調理した後刻む行為をすれば良いということで、別メニューにて調理しなくて良い)な方法であるため現在まで普及してきました。また、それにかわる調理方法に視点が向いていなかった原因があります。

 また重要な事は、お年寄りは咀嚼力がないから噛まなくてもすむような形にすれば、食べられる。そのために極キザミ食を提供してあげようという、間違った解釈が一般的には普及しております。そして最も危険なことは、時間をかけて刻まれていた介護食は、バラツキやすいために、かえって誤嚥(食べ物が肺に入ること)を引き起こすことが分かりました。

 従来、人間は生まれてから、ペースト→軟食→普通食というコースで機能獲得していきます。ご老人は、この逆をたどって終を迎えます。現実的にも病院でミキサー食を食べていた人は在宅で、軟らかい『うどん』や『豆腐』などを工夫して(ミキサー食は嫌だから)食べているのが現状です。

 医療側からの視点で考えると、やはり誤嚥は致命的な疾患です。飲み込みを司る嚥下中枢に障害があるということは、人間にとってはかなりADLの低下している事は事実であり、誤嚥性肺炎にて入院すると2種類の抗生物質で点滴をしますが、やはり肺に流動食が入っている場合と固形物(実際には、ワカメやナメコやホウレンソウなどが入ってます)が入っている場合とでは、治癒反応が違います。無理しないで、胃に穴をあける胃ロウ手術を受けて、チューブ栄養で様子を見ましょう。また食べられるようになったら(元気になったら)口から食べられるといいですね。という流れになります。

 近年、ソフト食やパッククッキング食やトロミ剤などの調理方法の進歩や、口腔機能向上リハビリや摂食・嚥下機能療法などさまざまな支援が急速に普及しており、また食品業者も知恵と工夫をしぼっております。

 この数年でキザミ食は過去のものとなりますが、現時点では嚥下のメカニズムを理解したうえで、軟らかいキザミ食を提供して、機能の悪い方にはそれにトロミを付ける対処で十分であると思います。軟らかさがあれば、刻む無駄な労力は無くなり作業も楽になります。