乳幼児の食育

〜健常児における摂食機能の発達過程〜

 母体から生まれた新生児が生きていくためには、まず呼吸をし口から栄養摂取をすることです。そして、赤ちゃんは、初めて出会うものをまず口に入れて試します。私たちは『生きることは食べることだ』という学習を口腔という感覚器官をとうして本能的に、生まれたときから始めています。

 しかしながら、現代の私たちを取り巻く『食』の事情は変化し、不安や危機感をはらんでいます。ライフステージに応じた『食育』を皆さんで考えてみましょう。

 下記のグラフは生後18ヶ月までの摂食能力の発達過程です。赤ちゃんの ほっぺを指でツンツンさわると、唇はおっぱいを探したりしますね。そのような反射が消失して離乳食の練習をしながら、目と手の協調を獲得し、立って歩行を始める過程です。

(摂食・嚥下リハビリテーションセミナー:金子芳洋より)
A:初期 B:中期 C:後期

 このステージで大切な事は、ミルクの後に初めて食べる離乳食のもつ意味(好き嫌いをなくし、なんでも食べられる味覚を認識させる・丈夫な身体をつくるため栄養素を摂取)を理解し、どのように作れば良いか?という事。

 また、最近では手づかみ食べの期間が非常に少ないためこんにゃくゼリーでの窒息事故が起こったり、うまく食べられない子供が増えています。

 食事が楽しくなくなると、子供らしさが失われ、外面だけが良い子供が増えてきます。その背景には、発達過程における誤解が要因の一つであるかと思われます。乳幼児の時期は、食事を楽しむことを覚えさせる大切な時期です。

では少し詳しく各ステージを考えてみましょう。

妊娠中
  母体内ですでに『指しゃぶり』を胎児が行っています。
経口摂取準備期 出生〜6ヶ月
  哺乳反射や指しゃぶり、玩具なめ、安静時に舌を出したります。
嚥下機能獲得期
  舌の蠕動様運動での食塊移送をします。

A 捕食機能獲得期(初期:ペースト食)5〜6ヶ月
  口唇で食物を取り込むことを覚えます。そして、食物をこぼしたり舌を出したり、食器スプーン噛みなどをします。

赤ちゃんがミルクを飲む時は、口を開けたまま乳首を口の奥まで入れて飲みます。6ヶ月くらいになると、だんだん口を閉じて飲み込むようになります。
          
口を閉じてゴックンします。この時期の食事は、ドロ状〜ベタ状の
ペースト食です。口唇で食物を捕らえることを覚えてきます。
 
最初は口をあけたまま飲み込みますが、
次第に口唇で食物を捕らえて口をとじて飲み込むことを覚えます。


(松戸こども発達センター 管理栄養士 浅野恵子先生のレシピより)

味覚は過去の記憶を脳で認識して、快・不快を判断します。
乳児期の食事は子供の好き嫌いの基礎となるのです。

B 押しつぶし機能獲得期(中期:軟食)7〜8ヶ月
  口角が左右対称に水平に動き、上下の口唇が食べている時扁平になります。舌突をうわあご(口蓋)への押しつけて食べるようになります。
 
2〜3秒モグモグして飲み込みます。舌でつぶすことを覚えます。

唇が水平に動き、扁平になります。
この時期の食事は軟らかく舌で押しつぶせる食形態です。


C すりつぶし機能獲得期(後期:普通食移行食)9〜11ヶ月
  頬と口唇の協調運動が初めて見られます。口角の引き、顎が横に偏位する表情が見られるようになります。
  頬をふくらましたりしてカミカミします。
まだ奥歯がはえていないので、歯ぐきでつぶします。

舌が横に動く機能を獲得し始めます
   硬さのわりには、磨り潰せない食品(かまぼこ・ウインナー)は避ける。 舌に『横に動き』が出てきます。そのため、口の中で散らばる食物をまとめることが出来るようになります。また、前歯で食物をかみ切ることができるようになります。つまり、あまり硬くない食物を奥歯でまとめながら食べることを覚えてきます。水分をコップで摂取出来るようにもなります。
自食準備期
   歯がため遊びをしたり、手づかみ遊び(犬喰い・食物の押し込み・流し込み)をします。
手づかみ食べ機能獲得期 12〜15ヶ月
   この時期は、保護者から全面的に食べさせてもらっていた状態から、自分の手を使いながら食べることへ、自立の練習を行っていく時期と考えられます。そして、離乳完了となります。牛乳・ミルクは300〜400tに制限してコップで与えます。

 自分の手で、唇の中央部から食事を取り込むようになり、前歯でかみ切ることが出来るようになります。

 昔は、親が子供に世話をする時間が、あまりなかったため、みんな手づかみ食べの時期を経験しておりました。しかし、近年は『部屋が汚れる』『早くお箸やスプーンで食べられるようにしたい』などから、スプーンで食べさせて、その後すぐに食具(スプーン・お箸)を使わせる傾向があります。

 人間は、手づかみで食物を食べることで、
食物の感触・大きさ・硬さ・一口量を自然に獲得していきます。この時期が削除されると、『硬い食品を食べること』『食事を楽しむこと』が出来ない子供が増えてきます。

 そして簡単に食べられるファーストフードに移行しやすい子供になる要因のひとつとなります。幼稚園にて、食事中のおしゃべりや姿勢や食べ方を注意する前に家庭でもう一度考えてみることが良いでしょう。

食具(食器)食べ機能獲得期
   口唇中央部からの食器(スプーン)の挿入し、食器を使いながら左右の手の協調運動や目と手の協調運動が出来るようになります。 物をつかむ時も、パームグリップ→フィンガーグリップ→ペングリップと持ち方が上手になる時期です。

【乳幼児期は『食習慣』を決める第一歩】

 このような過程を経て、赤ちゃんは『摂食と飲み込み』の機能を獲得していきます。この時期に食べさせる離乳食について考えてみましょう。実は、『おいしい』と感じるしくみは、過去の記憶と照らし合わせて脳が評価します。初めてのものは脳が不快と評価し、食べ慣れたものはと摂食中枢が評価します。つまりどのような離乳食を与え、手づかみ食べを獲得するまで親がじっとみてあげるか?が重要なポイントとなります。

 好きなもの、例えば『野菜』でも離乳食でうまく取り入れれば、脳が『快』と評価して食欲を満たします。すると脳内にβエンドルフィンという快感をもたらす神経伝達物質が発生します。さらにドーパミンというやる気を起こす物質も発生します。離乳食で好き嫌いをなくす効果があるということです。



   中高生での非行事例と食生活の検索で、朝ご飯を食べない子供やファーストフードに偏る子供のグループと家族で一緒にスローフードを食べる子供のグループで、有意な差がでるのも身体や五感をとうした楽しみや満足感が不足している事も一因であるかと感じます。

 では離乳食の例をご紹介いたします。これは松戸子供発達センターの管理栄養士である浅野恵子先生のレシピを参考にしました。

料理名    かゆ
材料 分 量
1人当り g
調 理 方 法

25
175
@ 洗って水切りした米と水(水は米の7倍)を鍋に入れ、火にかける。
A 煮立ったら火を弱め、途中でかき混ぜ、炊きあげる。

※ かき混ぜすぎると、粘りが出るので、焦げつかないように1〜2回
  かき混ぜる程度で良い。
エネルギー 89 kcal / 蛋白質 1.5 g / 脂質 0.2 g / カルシウム 1 mg

再調理のポイント
初期
     (ペースト粥)
     ・熱いうちにミルサーにかける。
     ・重湯が多いとザラザラのペーストになってしまうので、重湯は入れないようにする。
     ・とろみが少ない場合は、温かいご飯を少量入れ、ミルサーにかけるとよい。
     ・ミルサーをかけすぎると、のり状になり、食べにくい。

中期
     (全粥)
     ・このまま食べられます。

後期
     (軟飯)
     ・普通のご飯より少し柔らかくベトッとする位に炊く。
        (水は米の2〜2.5倍)

料理名    ブロッコリーのサラダ
材 料 分 量
1人当り g
調 理 方 法
ブロッコリー
じゃが芋
人参

マヨネーズ
15
10
10
10
6
@ ブロッコリーは小房に分け、柔らかく茹でる。
A じゃが芋・人参は1cm角に切り、柔らかく茹でる。
B 卵は茹で卵にして1cm角、又は、粗みじんに切る。
C @〜Bをマヨネーズで混ぜ合わせる。
エネルギー 79 kcal / 蛋白質 2.6 g / 脂質 5.6 g / カルシウム 18 mg

再調理のポイント
初期
     ・出来上がったブロッコリーサラダをそのままミルサーにかけてペーストにする。
       まわりにくい場合は、スープや牛乳少量でのばすと良い。
     ・ブロッコリーはとろみがつきやすい食材。

中期
     ・出来上がったブロッコリーサラダをフードプロセッサーにかけベタ状にする。
     ・柔らかく茹でた人参、じゃが芋、ブロックリーの茎など、いくつか形のまま残し、
       押しつぶしをさせると良い。

後期
     ・このまま食べられます。