よく噛んで食べましょう

〜咀嚼のすすめ〜

* 子ども編 成人編 ・ 高齢者編

 私たちは普段食事で、あたりまえのように口を動かして『噛む』ことが、なぜ大切なのでしょう。昔は『好き嫌いしてはいけません』『良く噛んで食べなさい』としつけされてきました。最近の子供たちは『早く食べて勉強しなさい、塾に行きなさい』とせかされて、軟食・ファーストフードを食べる機会が多く、間食にもスナック菓子を食べる子供が増えております。
 『良く噛んで食べる』の著者:斉藤滋さんは、弥生・平安・鎌倉・江戸時代・戦後・現代の食事を再現して、咀嚼回数と食事時間を測定しました。

【20代学生らが食べた再現メニュー】

弥生時代 噛んだ回数 3990回 ・食事時間 50分
ハマグリの潮汁、アユの塩焼き、ナガイモの煮物、カワハギの干し物、ノビル、クルミ、クリ、もち玄米のおこわ

平安時代 ブリとアワビの煮物、カブ汁、ダイコンのもろみ漬け、ご飯

鎌倉時代 噛んだ回数 2654回
イワシの丸干し、梅干し、サトイモとワカメのみそ汁、玄米のおこわ

江戸時代
(初期)
噛んだ回数 1465回
ハマグリの塩蒸し、サトイモとゴボウなどの煮物、鯛の焼き物、カブのみそ汁、納豆、麦飯

江戸時代
(後期)
かまぼこ、白身魚の吸い物、カレイの煮物、カブとウリの漬物、豆腐のみそ汁、ご飯

戦前 噛んだ回数 1420回 ・食事時間 22分
大豆のみそ炒め、たくあん、野菜のみそ汁、ニンジンとダイコンなどの煮物、麦飯

現代 噛んだ回数  620回 ・食事時間 11分
コーンスープ、ハンバーグ、スパゲッティ、ポテトサラダ、プリン、パン
小学生では噛んだ回数は500回でした)

現代人の1回の食事は、弥生時代と比較して
咀嚼回数が6分の1以下、食事時間も5分の1になったんじゃ。
戦前(70〜100年前)と比べても2分に1に激減してるんじゃ。

 斉藤さんは、『軟食・グルメ志向が、咀嚼回数に大きく影響している』といい食材が本来持っている歯ごたえを楽しむことの少ない子供の食生活に警鐘を鳴らしています。良く噛まずせかせかと食事をすませる人が多いですよね。

 学生たちが再現して食べた昔の時代のメニューをみてみると、いずれもなかなか美味しそうな和食だと思いませんか?
 地産地消・身土不二・口内調味・一汁二菜こんな言葉を思い出します。最近はファーストフードに対抗してイタリアに本部があるスローフード協会が、伝統的な食文化を未来に伝えるプロジェクトがあります。

よく噛むことで、唾液がたくさん出ますね。唾液の役割として 飲み込みの補助・抗細菌作用・粘膜保護作用・皮膚、神経の成長因子・消化作用・癌の抑制作用があります。もちろん、良く噛むことでご飯が甘くなり美味しく食べられます。良く噛むことは歯を丈夫にし、歯並びをよくするだけでなく、顔の骨や筋肉を発達させ、身体全体の発育や脳の発達にも影響します。

【噛めば噛むほど若さと健康が保たれます】

 顎を動かせば、直接脳を刺激するので、頭もクリアになり、目がキラキラ輝いて感動しやすくなります。噛むことで、顔面のホルモン系が変化して、顔がつやつやしてきます。若さと健康を保つ秘訣ですね。

【卑弥呼の歯がいーぜ】

 日本咀嚼学会では、良く噛んで食べることの効用として、癌・認知症・糖尿病・高脂血症を予防することが発表され、下記の標語を紹介しています。

肥満予防(血糖値の上昇時間)
味覚の発達(唾液の量と糖の消化)
言葉の発音がはっきり(歯並び)
脳の発育(脳への刺激)
歯の病気予防(虫歯・歯周病を防ぎ歯を丈夫にする)
癌の予防(唾液内の免疫物質)
胃腸快調(消化を助けます)
全力投球(スポーツ歯学での噛みしめと運動能力:マウスガード)



 歯みがきの習慣のない原始人は、虫歯や歯周病はほとんどありません。近代文明との接触による食生活の変化が、歯並び、虫歯、顎に影響を与えています。

【幸福は口福から】

 『噛む子・磨く子・丈夫な子』『いい歯・いい顔・いい人生』『歯なしにならない話』など歯を失う前に呼びかけて欲しい標語です。食生活・健康ジャーナリストの砂田登志子さんは、『健康な口、丈夫な歯がなければ、おいしく食べられない。健口を保つことが食育の第一歩』と呼びかけています。そして、噛む回数が増える『豆』はすばらしい健脳食。口の周辺や顎の筋肉をよく動かし、脳の血液循環を活性化させて認知症予防にも効果的です。江戸時代の寺子屋では、『福』という字を『一・口・田・ネ』と分解して『ひとくちだね』と子供たちに教えて、『一口をよく噛みしめ、深く味わって食べましょう』と説いていたそうです。口は入れる食と、出す言葉の玄関です。両方とも慎重に選び、安心と安全を確保しましょう。食育は近年注目されていますが、実は新語ではなく100年以上前は子育て、しつけの基本でした。明治後期まで育児には『食・体・知・才・徳』の5育がありました。食の教育とは生きることですから、読み書きより先にしないといけないのですが、最近の食環境は危機感があります。

【咀嚼のへたな子増加〜うまく食べられない子の治療〜】

 舌の先を伸ばす訓練を終えると、小学生たちは糸を通したボタンを唇でくわえ、ぐっと引っ張り始めた。唇の筋肉を鍛える訓練をしています。約10分間、咀嚼に必要な唇や舌、頬の筋肉を動かすと、持参したリンゴやせんべいなどを歯科衛生士と一緒に回数を数えながら食べます。その際、前歯や奥歯の役割を繰り返し説明して、最後に歯の磨き方を指導します。

    

 顎の発達が不十分な子供は、良く噛んで食べていないことが多いのです。つまり、噛まずに飲み込む子供が増えてきています。カレーやハンバーグなど好んで食べるものを与えているうちに、おにぎりのノリも嫌う子もいます。歯並びは遺伝的な要素もありますが、顎の発達には軟らかい食べ物も影響してます。かめないまま高齢になると、飲み込むのが難しい『嚥下(えんげ)障害』になる恐れがあります。社会が忙しすぎるのも原因ですね。
 口腔全体を使わないでも食べられるファーストフードを摂ることの多い子供は、口腔機能体操(ごっくん体操)も練習しましょう。

【ごっくん体操】

(舌と頬の運動) 〜最後にゴックン♪〜
・舌の先で左右の頬の内側をしっかり2回押す。上下の口唇の内側も2回押す

・歯と口唇の間を大きくクルリと右回り2回左回り1回してゴクン

・頬をしっかりふくらませる。息を吸うように口をすぼめる

口腔周囲筋を鍛えて『咀嚼』しやすい『口』にしましょう

【ストローパック吹き】   【輪ゴムリレー】
    
●肺活量・咳反射・呼気の増強
  鼻咽腔閉鎖・口唇閉鎖の強化
     ●舌訓練(可動域・筋力・動き
  口唇閉鎖・頬筋増強・噛む力

【あっち向いてホイ〜舌訓練〜】
●舌訓練(筋力・俊敏性)

 『咀嚼』するということは、歯だけを使うわけではありません。レタスなどの葉物を食べるとき、舌と頬が食物を折りたたむ役割をします。そして歯で磨りつぶして、食物の塊をつくります。その塊を舌で使って喉に送り込んで、飲み込みます。一連の動作には口腔周囲筋を十分使うことが大切です。

【歯並びの悪い子供が増えています】

 はじめて永久歯に生え替わる時期(5−7歳)、下の前歯2本がきれいに並ばないで、斜めに生えてくるお子さんが多くなっています。歯並びには遺伝的要素が多く占めますが、軟らかい食べ物が増えたことも原因のひとつです。また、親は噛めないことに気づいていないことが多いです。レトルトカレーにシーフードを加えると噛む回数は2倍になります。スパゲッティーにあさりを入れるだけでも咀嚼回数は増えますよ。噛むことで味わう習慣をつけると、いろいろな食べ物を好きになる可能性があります。1品でもいいから、噛みごたえを意識したメニューを入れてあげてください。

お母さんへ
『早く食べなさい』 から 『良く噛んで食べなさい』 と
教えてあげください。
そして1日1回は子供の口を見てください。

【口腔は感覚器官】

 13種類の素材をつかってコンソメスープを作り、85名の小学生にスープの素材当てクイズを行ったところ、3名の子供が13種類すべてを当てました。その子供たちに共通する点は、『良く歯を磨く』『虫歯が少ない』でした。
 噛むことで、歯の汚れが落ち、唾液が洗い流すので虫歯予防になります。 唾液は消化吸収を助けるだけでなく、味覚を敏感にする物質も含まれています。噛むことで舌を動かせば発音がよくなり、血流量が増えて脳が活性化します。

赤ちゃんは、初めて出会うものを、まず口という感覚器官にて試します。呼吸・発音・飲み込み・発育に『口腔』は大切な器官なのです。だからいつも清潔にしておきましょう。
【食べる前から脳への刺激は始まっている】



 美味しそうな盛りつけ・匂い・ご飯をつくる音・『ご飯が出来たよ』という声・これは『おいしい』という味・今日の食事は前に行ったレストランで食べた料理と同じだ・どれから食べようか・誰と一緒に食べようか・美味しかった事を誰につたえようか、、、など美味しい食事は色々と脳を刺激します。当然咀嚼・唾液など口腔からの刺激も心地よい刺激として身体全体で感じるでしょう。

【食糧問題を意識しましょう】

 日本は残飯世界一って最近は知っている人も増えてきました。金額に換算すると年間11兆2千億もの残飯を捨てています。その分で地球上の1年間に餓死する1500万人の命をつなぎとめる事ができるのです。日本の子供たちもよく話してあげれば、納得するはずです。咀嚼・食育は環境問題と同じように継続して考える場を与えることが必要です。

僕たち日本人が食べ残しをやめるだけで、
世界中の餓死する人たちを救えるんだよ


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