モーニングスローフード作戦 経過報告

当研究会では本年度より食育に取り組み、食べる機能の正常な発達過程を数校の学校に講演しました。近年、手づかみ食べをすると食卓が汚れる等の理由からその過程を削除して食具に移行する子どもがいます。食べる機能は後天的に獲得されるもので、順番をとばして(親がスプーンで食べさせたり、手づかみ食べをしない)食具に移ることで、正常発達に不具合(箸が使えない・食事が楽しくない・正しい食べ方をしない)が生じます。

 講演後、1番多い質問は、『食べる環境が良くない子どもの改善方法について』でした。確かに本人の食に対する意識を向上するには教育が必要ですが、朝ごはんを家族といっしょに食べる等の行動に繋がる食育を実践するには、保護者を含めた動機付けが必要です。また、家庭にはそれぞれ事情があり、従来の知識伝達型教育では不十分と考えられます。

 そこで、家族が『食』に関心を持ち、食育を実践するシステムがないかと思案しました。そこで考えた作戦がモーニングスローフードです。知識教育と五感を使う課題体験(欠食の多い朝食とスローフード)をとうして解決策は子ども自身で考えた案を集めてみる。
私達は黒子になり、食育チームアプローチから各分野の知恵を集め、その疫学的解析から食に対する関心度が向上するための教材『考える食育』を作製しました。

     金曜日に担任教師から朝食の意義について生徒に知識教育をする。

     生徒は朝食の意義を家族に伝達して、日曜日にテレビを消して(家族との会話をひきだし、味覚に集中するため)家族といっしょにゆっくりと朝ごはんを食べる。

     月曜日に各学校にて食行動と意識調査アンケートを実施する。

     そのアンケートから考える食育教材を作製する。

     子どもからボトムアップされた食育を構築する。

     行政・学校・学校歯科医・食に関心のある方等全体から地域食育を普及・啓発する。

さらに、現場で役立つツールとして食育研修CDを作製しました。食に関心が低い方でも親しみやすく聞いていただけるために、コンセプトを『美味しく・楽しく・健康的に食べる』として食行動(誰と何をどのように食べる)をテーマとしました。食行動を客観的に表現し動機付けに繋げるために苦労した点は『誰と食べる』でした。家族と食べること、ゆっくりと楽しく会話をしながら和食を食べることが大切であるというメッセージを伝えるためには、なんらかの納得できるエビデンスが必要です。そこで、食事中の会話内容を分類(楽しい会話・楽しくない会話)して、正しい食行動をすると会話(精神状態)が楽しくなるという疫学的結果と家庭での食行動を向上するコツ(相関関係)を柏市内全小・中学校児童9500人の統計学的処理から考察しました。人口39万人の中核都市である柏市は他の幅広い地域での参考資料となると思われます。  以下はその内容です

食育健康教育の効果について

近年、子どもを取り巻く食環境は大きく変化し、肥満傾向児を10%前後認めます。
血糖値や中性脂肪には大きな変化はありませんが、血中コレステロール値が200mg/dl以上の高脂血症児童が2割に近づいており『食』に対する認識不足が将来に与える影響に対して危機感があります。また「キレる」精神状態は、食事の不規則性(欠食)や高カロリーな糖質食品の過剰摂取から起こる血糖値の乱高下が要因となります。一方、食べる速度と肥満の関連は多くの論文で述べられており、同じ量でも食べる速度が速いと太りやすいという研究も認められることから、スローフードの重要性が提唱されます。

モーニングスローフード
知識教育→家庭への伝達→体験学習

考える食育:教材・CD・各学校資料

食育へのきっかけ作り→家庭伝達
意識の向上・食行動の変容

東京都予防医学協会より(n=8355

食」に関する指導は、知識を教えるだけではなく、知識を望ましい食習慣の形成に結びつけられるような実践的な意識と行動を育成することが重要です。さらに保護者を含めた家庭での食環境の向上が生活習慣病の予防には必要です。

今回のアンケートは、生徒の意識回答を身体・精神への影響・会話を正・負のイメージ・食行動結果として全てカテゴリー分類(39項目)して各生徒の数値を入力し、そのデーターをさらに15項目に整理し、120種類クロス集計から食行動との関連を考察しました。

● 意識調査:会話の正・負回答の基準

  意識回答を分類し、1〜5を正(楽しい)の話題6〜10を負(暗い)の話題とした。

1.楽しかった・うれしかった・おもしろかった・安心した・落ち着いた気持ち

2.自分のことや、家族に関する話題

3.食に関する話題で楽しい表現

4.家族以外の話題

5.テレビの話題

6.食欲がない・眠い    7.未記入

8.何も話さない・ほとんど話さない・会話が少ない

7.身体的・精神的影響の表現(疲れた・さみしかった・嫌な気持ち)

  10.気になる回答(極端な負の意見:身体・精神的影響の強い回答)

● 身体的問題:立ちくらみ・腹痛・頭痛・疲労感・気持ちが悪い・昼食までもたない等

● 精神的問題:イライラする・元気が出ない・さみしい・疲労感・気分が悪い等

 

※ どの食行動に重点をおいて指導すれば食環境が是正されるかを疫学的解析した結果

@     朝ご飯をゆっくりよく噛んで食べると身体に良いことを家族に伝達する事と正しい食行動に相関関係を認めました。

A     家族との食事や会話・ゆっくり食べることが正・負の会話と相関する学習教材を作製しました。

B中学校の欠食児童では伝達の有無や就寝時間が精神的影響を与えることが示唆されました。

モ−ニングスローフード 伝達と意識の関連

【伝達×正・負の会話:小学生】
【伝達×ゆっくり噛む:小学生】
【伝達×正・負の会話:中学生】
【朝食の風景:中学生】
【伝達×精神的影響:欠食中学生】
【就寝×精神的影響:欠食中学生】
モ−ニングスローフード 伝達と食行動の関連
【伝達×会話の有無:小学生】 
会話なし:伝達あり29.3% 伝達なし41.8%
【伝達×会話の有無:中学生】

会話なし:伝達あり16.5%  伝達なし33.8%

【伝達×ゆっくり噛む:小学生】
早食い:伝達あり26.3% 伝達なし 43.9% 
【伝達×ゆっくり噛む:中学生】
早食い 伝達あり 19.8%  伝達なし 42.6%
【伝達×孤食:小学生】
孤食:伝達あり 14.1% 伝達なし 27.3%
【伝達×孤食:中学校】
孤食:伝達あり31.9% 伝達なし54.1%

【考察】

 全ての食行動と意識調査のクロス集計を解析したところ、伝達の有無に相関を認めました。そして、伝達できなかった子の食習慣を把握した結果、精神面に影響をすることがわかりました。

子ども達の食習慣を是正するためには、食育について学習したことを、家族に伝達することに重点をおいた教育指導が望ましいと考えられます。