って本当に効果があるの?


(体操を見る前にご覧ください)

 嚥下体操(食前体操)は、以前より摂食・嚥下に関わる多職種の方が色々な工夫をして存在しております。上半身と口腔周囲筋のストレッチが基本となっておりますが、なぜこの体操が摂食・嚥下障害(誤嚥性肺炎)の予防となるのでしょうか?食前の準備体操の意味もありますが、下記のアニメーションを見て考えてみましょう。



 誤嚥は喉に送り込まれた、食塊が気管に誤って入る事ですが、この喉の領域は不随運動つまり反射ですから、自分の意志で動かすことの出来ない領域です。では、『気管に入る所の蓋(喉頭蓋)を閉じてください』と指示しても自分の意志で動かす事は出来ません。喉に良い状態で食物が送り込まれる事が重要です。

 しかしながら、口腔周囲筋(顎・頬・口唇・舌)は随意運動ですので、自分の意志で動かす事が出来ます。そして、この領域の運動能力が向上する事で食塊が喉を通過しやすい状態でスムースに喉に送り込まれる事から、気管に食塊が入りにくい状態になり誤嚥を防止します。

 健康な方でも、65歳以上から食前に嚥下体操を習慣化し、口腔領域(虫歯・歯周病・義歯・舌・頬・口唇の運動機能)の重要性を意識する事で、口から美味しく食べること(健康寿命)が延長されます。



体操で機能が向上しても、
病気になったら同じじゃないの?


 介護の原因となる疾患は
@ 脳卒中: 手足の麻痺と同様に口腔や喉に麻痺が起こることから摂食・嚥下障害が発症します。ごっくん体操に慣れてきたら、運動の可動域を広げていく事が大切です。つまり、健康なうちに舌の運動であれば、なるべく大きく動かして口の奥まで舌が届くように、口唇にイーウーや首の回旋も大きく筋肉がつっぱるぐらいに体操を行います。可動域を広げておけば、麻痺が起こってから、リハビリを再開した時に効果の違いがでると思われます。また、発症後普通食を食べる事が可能な場合でも、口の中に感覚障害のある間は、体操を行うことにより必ず誤嚥性肺炎の予防になります。
A パーキンソン病: 全身の筋肉が固縮すると同様に顔・口唇・舌の運動が緩慢となり、食事の際に喉に送り込めなくなります。食事に時間がかかったり誤嚥が生じます。この病気は、昔マスターした運動はドーパミンの影響を受けにくいという特性があります。重度ではなかなか難しいと思いますが、診断がついた時から始めると予防になると思われます。また、仮面様顔貌の予防リハビリにも効果があります。
B 認知症: 認知症の摂食・嚥下障害は、飲み込み障害が少なく、喉に送り込まれるまでの障害にて起こります。認知症の方には声かけや食介助が大切になりますが、指示が入らなくても視覚(ジェスチャー)は十分伝わります。ごっくん体操を映像で見せる事でリハビリを行い、最期まで口から食べさせてあげてください。
C 高齢・虚弱・神経難病: あまり長い体操は習慣化しません。配膳中にビデオを流して、出来るところを毎食後、少なくとも舌体操は行ってください。

 今までの食前体操は集団で、1日1回昼食前に行う体操が数多くありました。しかしながら、在宅等で指導しても本人や家族が習慣化する事は難しいと感じておりました。そこで、毎回配膳前に2−3分でご自身が行えるように、ごっくん体操は短くなっております。既存の体操とうまく組み合わせてください。また、自立度の低い方のビデオ体操を新設することにより重度の認知症の方にも、無理なく要介護者への支援が行き渡るようにしました。

口腔が寝たきりにならないようにチームアプローチをお願いします。



今は食事に問題がないので、やらなくてもいい?
 食事が自立しており、一見元気そうな高齢者の中にも、よくよく聞いてみると『最近むせやすい』『口が渇いてしょうがない』『味がわからない』と訴える人がいます。この中の約2割の方が近い将来、誤嚥性肺炎に移行する危険があります。介護度と誤嚥性肺炎の発症比率を見てみましょう。



 このように、要支援・介護度1の人でも約5%、介護度4・5では30〜45%の方が誤嚥性肺炎の危険があります。また、自立している高齢者でも口腔清掃状態は低下しており、介護度2になると70%以上の方が自分自身での口腔清掃が出来なくなります。

 手足や身体に麻痺が起こった場合のリハビリでは、麻痺側の筋肉を動かして機能回復を試みます。つまり、左麻痺の時は右手で左腕を持ち筋肉を伸ばしたり、縮めたりします。人間の身体は骨と骨との関節によってつながっています。 しかしながら、顔の筋肉や口腔周囲筋は、骨や関節とのつながりが無いため、リハビリの行いにくい領域といえます。だから、ご老人は『よだれ』が多いのです。顎骨の関節は、人間の身体で唯一、他の骨との接合がない骨なのです。



高齢者の口の中や舌を見てみましょう。


 上図のように、舌垢のある高齢者は沢山いますね。舌ブラシやスポンジブラシで清掃すると下図のようにきれいになりますが、ここで少し考えてみましょう。

 赤ちゃんがミルクを飲むと舌は真っ白になりますよね、でもしばらくするとピンク色の舌にすぐもどります。これは、口腔内の唾液が多く、さらに口腔周囲筋つまり、舌や頬や口唇の機能が活発であるからです。我々健常者でも、舌苔が付く事はありますが、時間とともに食道に飲み込んでおります。  しかしながら高齢者は、舌に細菌やカンジタ菌が停滞し、就寝時に肺に誤嚥しているのです。

 ごっくん体操の目的は、口腔周囲筋の機能を向上することなのです。
レタスをゆっくり食べてみると、口の中で何回も折りたたんで噛んでいる事がわかりますね。つまり、頬と舌が折りたたむ役割をして、歯や義歯で磨りつぶします。歯の機能だけではなく、頬と舌の協調運動が咀嚼や飲み込みには必要なのです。お口の体操のもう一つの効果として、口輪筋がひきしまってきれいな口元になることがあります。筋機能療法といいリップラインが良いモデルや芸能人もやっている方がいます。

ごっくん体操を習慣化して、安全で、美味しく、楽しい食事にしましょう。


ダウンロード版は、縮小しておりますので画像が劣化しております。
完成版の購入をおすすめします。

DVD付録:緩和ケアの中で、ICUの口腔ケアでの口腔消毒薬は、【ヒビテン】と言う所がありましたが、【イソジン】の間違いです。製作プレス段階で著作権問題があり、ぶっつけ本番で撮影しましたので間違えました。
また、『脳卒中発症後、普通食を食べているが、感覚麻痺があるために6ヶ月後に新たに発症する3%の嚥下障害』のフレーズが2回出てきましたことをお詫び申し上げます。